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あなたでもできる企業信用調査と与信管理(3)

前回に続き《あなたでもできる企業信用調査の概要》をご案内いたします。

4.役所での情報収集
公共の施設〔役場〕などを利用し情報を収集します。業種によって得られる情報の種類は違いますが、おもだって得られるのは、建設業、宅地建物取引業です。その他これら2業種よりか資料内容は乏しいのですが、貸金業、商品先物取引業、特殊法人、産業廃棄物処理業などがあります。
建設業に関してはある程度事業を展開している業者は〔建設業許可〕を取得しており、その申請した内容を建設事務所で閲覧できます。
三河地方でしたら岡崎にある西三河建設事務所6階 総務課建設業担当室で閲覧できます。閲覧できる内容は次の通りです。
・取得している建設業許可
・過去3期分の主要工事実績
・過去3期分の決算書
・代表者及び役員の経歴書、従業員名簿、取引金融機関
これらのチェックポイントとして、
・総合建設業か専業の工事業者か?
・主にどこの仕事を行っているか?
・近況3期の売上高及び損益の推移はどうか?
・累積の損失はないか?
・自己資本比率はどうか?
・借り入れ状況はどうか?
・代表者はどのような人物か?
・取締役の構成はどうか?
 などを確認し、判断するとよいでしょう。

不動産業者に関しては宅健業免許が無ければモグリ業者になるので確認は必要です。愛知県建設部建設業不動産業課にて下記の内容が閲覧できます。
・営業年数
・過去の営業実績(免許の更新時のものに限ります)
・称号、代表者、役員、事務所の所在地
・専任の取引主任者
・資産状況など
・過去の行政処分の有無
建設業の資料が毎年更新されるのに対して不動産業は5年更新(免許更新時)となっています。また、具体的なデーターは記載されておらず概要の数字のみとなっています。とはいうものの売買を主体にしているか仲介を主体にしているかを判定できるなど利用価値はそれなりに高いので確認しておきましょう。
その他業種は金融庁、市役所、保健所などで資料を得ることができる場合もあるので担当部署で確認をしておきましょう。

5.相手先への視察、直接調査または側面調査、周辺への取材
その他対象となる企業の情報を得る方法として直接調査間接調査があります。
直接調査とは相手の会社にアポイントを取り、社長や役員、担当者に面談し取材するやり方です。対象企業と対等あるいはそれ以上で、取引的に調査してもなんら相手の気分を損ねることのない正当性があり、相手も十分応じてくれる見込みがある場合に行うと良いでしょう。利点として直接話が聞けるので、より詳細な情報を得られやすいが、欠点として調査をしていることが相手に分かってしまうことがあげられます。
一方側面調査は相手方に調査を行っていることを悟られないように極秘に周りから調査するやり方です。あなたが対象企業より取引上での立場が弱く、相手も調査に応じてくれる見込みがない場合や、円滑な取引を望むが相手先の心証も悪くしたくない、かといって相手の概要も分からないと困る場合に行うとよいでしょう。調査していることが相手に知られないが、間接的なところからしか情報を得ることができないので、入手できる情報の量が限られるという欠点があります。
以上のようにどちらも一長一短の特性があるので個々の事情に合わせて行うとよいでしょう。

6.取引先からの噂の有無、更には業界での評判など聞き込みによる調査

この調査方法は対象となる企業の取引先(販売先、仕入先、同業者)などへ聞き込み(面談)にいって調査を行います。一般的に対象となる会社の取引先のほうが銀行やリサーチ会社より最新の情報を持っているケースが多いのです。何故かと言うと取引先は実際にその会社や現場に定期的に訪問し、変化などを肌で感じたり、そこで働く従業員や関係者からよからぬ噂を耳にすることがあるからです。危険な兆しが生じるのはやはり現場であり、現場では隠すに隠せないものがあるからです。その綻びがこのような形でちらほらと見えたりもします。
・手形のジャンプ(決済日の引き伸ばし)を要請された。
・現金決済を小切手あるいは手形に変更された。
・懇意な取引先との融通手形が振り出された形跡がある。
・長年勤めた経理担当者が辞めた。
・主要な商売り上げの商品決済とは別に什器備品などの支払いが滞りがちになっている。(大口を優先に何とか決済し、小口を後回しにしている。)
・表向きになんら変わらないように見えるものの、事務所内の雰囲気が何か重苦しい。(ボーナスが出ない、給与の延配)
銀行も提出された決算書や計画書、当座預金の動きなどから不渡りを察知することもできるのですが、破綻間近の企業は銀行から切られまいと何が何でも事実の隠匿やカモフラージュを図るケースが多いのです。このように会社が事実を隠そうとしても現場では何らかの予兆は洩れるものなので対象企業の取引先への聞き込み(面談)は必要な調査です。

7.その他銀行、新聞社、裁判所、警察、官報などから場合により情報収集
銀行
単に興味本位であれば銀行マンも簡単には情報を教えてはくれませんが、新規取引に絡んでいて、それにより会社の収益となり、支援銀行側にも新規融資や協力預託金などのメリットが生じると判断すれば、たとえ取り扱い支店が違っても同じ銀行や信用金庫ならば情報提供もやぶさかではないはずです。
新聞社
新聞社では何年にもわたる膨大なバックナンバーを管理しており、過去の新聞記事を検索して〔何年○月△日 朝刊〕に記載されていることを照会してくれます。それが良いニュースの記事でも悪い事件の記事でも電話一本でです。因みにその記事の詳細を読みたければ図書館に行けば昔の新聞もすべて読むことができます。
裁判所
裁判所では競売物件の詳細を閲覧することができます。閲覧資料は物件明細書、現況調査報告書、評価表など裁判所の書記官室に備え付けられているものを閲覧することができ、資料により競売にかけられた経緯が推察できます。
警察
原則的に警察では情報を公開してはいませんが、尋ねれば教えてくれることもあります。あまりにも対象企業が暴力団という疑念がぬぐえないようであれば、所轄の警察署捜査二課、若しくは生活安全課に相談に行くとよいでしょう。
警察は民事不介入が原則なので仮に暴力団であっても そこと商取引をするな などとは言えません。しかし、その取引に何らかの事件性を感じたら事件を未然に防ぐという観点から警察が掌握している関係資料に該当しているかどうかぐらいは教えてくれるでしょう。
官報
官報では確実で重要な情報が得ることができます。官報で公告される事項には、各種許認可の取り消し処分の公告、裁判所からの破産や会社更生関係の公告、または、合併や決算公告などがあります。他にも入札公告、入札公示、公示催告、失踪、除権決定、破産、免責、特別清算、会社整理などがあり、どこの医院が指定医療機関の休止処分を受けたとか、どこの何という会社が清算開始になった、あるいは個人が破産手続き開始になった、また免責可決決定となったという情報がその都度記載されています。これらはほとんどの図書館で閲覧が可能です。

8.それでも十分な情報を得られなかったときは
ここまで解説してきたのが合法的に皆さんでもできる簡単な調査方法であります。これまでの調査方法を実践すればそれほどコストをかけずに相手の会社の実態がそれなりに分かってくるはずです。まずは身近な資料から対外的に公表されている情報を確認し、次に実際に現地を確認して、会社や不動産の登記簿で実像を見極め、さらには入手できれば決算書を分析し、許認可が必要な業者であれば役所で確認し、そのほか銀行や取引先にも話を聞いて総合的に判断を下すことになります。しかし、あまり参考となる資料が得られなかった場合やあまりにも高額な取引となるので有料でもいいから詳細な資料が欲しいという場合には専門の調査会社に依頼することをお勧めいたします。

最後に・・・
今回この様な講座を行うことができたのも、青経塾に入り、企業とは何か?会社を経営することとは何か?また他多くを遠山塾主から教えていただいたからだと感じております。誠にありがとうございます。そこで、微力ではありますが、私の知識を皆さんのお役に立てればと思い当社が行う調査の手法を私なりにお伝えしてきました。
さて、調査会社を営む者として感じていることは、日本人は調査に疎いと感じます。中小企業や個人が相手を細かく調査することは少ないです。これは金銭的な事情、取引上で立場が弱いという事情、はたまたそんなことは時間の無駄、無用という認識もありますが、もうひとつ、調査そのものに潜在的な抵抗感を持っていると思われます。
それはおそらく正々堂々を美徳とする武士道の名残が意識下に少なからず継承されているからかと思います。それはそれで素晴らしいことで失ってはならない精神ですが、実際にはしか見ない真面目な者よりも、を知る狡賢い物の方に分があるのです。調査をあくどく利用することを推奨しているのではありません。逆にそんな人々に誤魔化されないような術を知っておくべきだと言いたいのです。企業防衛、護身の為に必要な情報を得る為の正当防衛であると考えていただければ幸いです。
商取引においても、人生においても万事無難に事が運ぶというようなことは奇跡に近いと考えた方が良いです。やはり商売とは最終的な仕事であるお金を回収するまでは油断できないものであります。したたかに、そしてまさかに備え的確なリスク管理をしておくことが肝要であると私は思います。
お付き合いいただきありがとうございました。

第41青経塾 長坂祐樹