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相続の常識・非常識(1)
相続はある日突然やってきます。事故や火事のための保険はしっかり準備していても、相続の準備まではなかなかできないものです。
ここでは、弊社にご相談いただいた事例や、注意するポイントを取り上げました。皆様やご家族がより安心して生活できるための参考にしていただきたいと思います。
借金すれば相続税が安くなる ・・・・ ×ウソ
「借金をすると相続税が安くなる」いまだにこの言葉をそのまま信じておられる方もあるようです。正確には「建物などを取得すると相続税が安くなる」で借金の有無は直接関係ありません。
3億円の預金と1億円の自宅、2億円の駐車場用地の合計6億円の財産をお持ちの方が、駐車場に3億円のマンションを建てる場合、現金でマンションを建てようと、全額借入で建てようと、財産の相続税評価額は同じです。
借金はマイナス評価ですので、借金の分は財産を減らすことができます。しかし現金を3億円使っても、使ってしまえば現金はなくなりますのでその分の財産は減ります。ですので、現金を持っていても借り入れをしていても、結局は同じことなのです。
ではなぜ借金でマンション建設を勧めるのでしょうか。3億円の現金は3億円の評価になります。しかし、建物に現金を使った場合、同じ3億円でも評価額は約半分くらいになってしまいます。この評価額の差が、結果的に相続税を下げることになります。
養子縁組は一人しかできない ・・・・×ウソ
相続税を計算する際に、養子がいるときには「相続税の基礎控除の計算」、「生命保険金・退職金の非課税限度額の計算」及び「相続税の総額計算」を行う場合、法定相続人の数に入れることができる養子の数に制限が設けられています。これは、相続税を安くするため、実際に孫などを10人以上養子にするような人が多く現れたため、これを規制するために法改正が行われたものです。改正後は実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までを法定相続人の数に算入することとされました。
相続税の基礎控除金額は5000万円+法定相続人一人につき1000万円 ですので、相続人が増えることは大きく相続税の計算に影響します。
しかしこれは相続税の話。民法上養子の数に制限はありませんので、養子縁組を何人してもまったく問題はありません。
未成年者や認知症の方は遺産分割協議に参加できない
相続人に20歳未満の方の未成年者や認知症の方がおられる場合には、その方は遺産分割協議に参加することができず、法的な行為ができないとされています。それは民法上では行為無能力者となるためです。
未成年者の場合は家庭裁判所にて特別代理人の選任を行うのですが、相続人である親権者は利益相反行為となるため特別代理人になることができません。また、選任審判には結構時間がかかりますので、相続税の申告期限までに分割協議を終えるためには早めに選任手続きに入ることが肝要です。認知症の方も同じく家庭裁判所で成年後見人の選任を行う必要があります。
もし相続分割協議が申告期限まで(亡くなった日から10カ月)に整わないと次のような規定の適用ができなくなるため、非常に不利になるため早めの手続きが必要です。
●配偶者の税額軽減
配偶者が相続した財産が1億6,000万円又は法定相続分のいずれか少ない金額まで免除される
●小規模宅地の評価減額
自宅なら240㎡まで、事業用用地なら400㎡まで、一定の条件に該当 すると80%減額される(賃貸不動産については200㎡まで50%)
相続時精算課税制度の事業用資産の特例は利用しない
平成19年から事業用資産である同族会社株式の相続時精算課税については、一定の条件のもとで非課税限度額が2,500万円に500万円上乗せされるとともに、親の年齢も65歳以上から60歳以上に引き下げられましたが、この適用を受けると相続の際に本来適用できる「小規模宅地の評価減額」や「特定事業用資産の評価減額(同族株式の評価減額)」の適用をすべての相続人について適用できなくなります。自社株の贈与を検討しているならば、通常の相続時精算課税(2500万)の適用を受けるべきでしょう。
また、平成21年度税制改正における自社株式の相続税の納税猶予制度の導入(平成20年10月からの予定です)と相続税の課税方式を含む抜本改正が予定されております。ここでは詳細には触れませんが自社株式の納税猶予の適用後5年間事業継続及び株式保有とともに雇用の8割維持要件や経済産業大臣の確認、また何年維持すれば免除してもらえるか等々、決まっていない点があり、「中小企業経営承継円滑化法」を含めた関連法案に今後も注目していかなければなりません。
後継者を決めているにもかかわらず遺言も贈与もしていなかった
後継者を決め、後継者教育もしっかりしていたにもかかわらず、遺言書も作成せず、贈与もしないまま相続が発生し、相続人の間でもめてしまった・・・。
このようなことにならないようにする方法のひとつを紹介します。
1.相続時精算課税制度を利用して株式を生前に贈与
相続時精算課税制度を利用して後継者に所有株式を生前に贈与してしまうと、問題なく経営権を移すことができます。相続の際に贈与はなかったとして再度相続税の計算を行いますので、大きな節税はできませんが、経営権(財産権)確保に重点を置く場合には優れています。
相続時精算課税制度は「今の価格で評価を確定できるツール」と考えてください。
贈与を受けた後、後継者が事業を伸ばし会社の評価額が上がっても、贈与を受けた時点の評価額で相続税が課税されるため、後継者は安心して業績向上に専念できます。(逆に価格が下がっても贈与時の高い価格のまま・・・ご注意を。)
2.遺言書の作成
遺言書によって後継者に株式を相続させることを明確にします。この場合、遺留分の問題がありますので十分留意しておく必要があります。先の相続時精算課税制度を利用したとしても、遺留分は残りますのでご注意下さい。
また、後継者以外の相続人には贈与などを先に行い、それと同時に遺留分の放棄も同時にしてもらいます。家庭裁判所での手続きなので手間はかかりますが、将来の紛争を未然に防ぐには、遺言書+遺留分の放棄 が最も有効な方法です。
相続対策と一言で言っても、十人十色、同じケースはありません。その家族が描く幸せな将来像も、さまざまです。なぜその対策が必要なのか、家族全員にとって、また会社の成長・存続のためにこの対策は必要なのか。
まずは現状をしっかり見つめることが大切です。けして「相続税」対策だけをしないことです。税金を安くするための対策が、故人や家族の想いを無にして、幸せな家族、兄弟がバラバラになってしまう例によく遭遇します。
必ず訪れる相続。相続を「争族」にしないためにも正しい知識と思いやりをもった「対策」で、家族の幸せを実現できる相続を願っております。
株式会社相続手続支援センター名古屋
代表取締役 ・ 税理士 山田知広
